幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「そういえば、なんで副長は今夜まで詮議を伸ばしたのかな。
昼間でも良さそうじゃない?
そうすれば脱走の可能性も低くなるし……」
そう言うと、総司は呆れた顔でこちらを見下ろした。
「アホか。昼間からそんなことしてみろ。
明里を連行するのを多くの人に見られることになるんだぜ。
馴染みだった山南さんに悪い噂が立つのは、火を見るよりも明らかじゃねえか」
「あ……」
そうすれば、隊士の山南先生に対する評価も低くなり、山南先生はますます新撰組に居づらくなってしまう……。
「そっか。副長、ちゃんと考えてるんだね」
それに比べて、あたしはまだまだだなあ……。
「ま、お前にはお前にしかできない仕事があるだろ。
それを一生懸命やるしかねえよ」
総司はお茶を飲みながら、まるであたしの思考を見抜いたように、落ち着いた声音で言った。
「偉そうなこと言ってないで、どこで明里さんと会ったか、思い出せよっ!」
ぎゅっと耳を引っ張ってやる。
「いてて、やめろって!俺だってさっきからずっと考えてるって!」
手を離すと、総司は耳をさすりながら、思い切り眉間にシワを寄せて考え始めた。
そうしているうちに時間は過ぎ、何事もないまま日が沈もうとしていた。