幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「これは……」
紙はふわりと浮いて、あたしの手の中におさまる。
「斉藤先生の式鬼じゃない」
後ろに真言が書かれたそれを開くと、斉藤先生の文字が整然と並んでいた。
その内容を見たあたしは、思わず目を見開いてしまった。
「そ、総司!山南先生が……!」
「山南さんが?どうしたんだよ?」
「山南先生が、無断で外出したみたい」
明里さんを連行する予定の今夜まで、山南さんがこっちに向かわないよう、幹部で見張っていたはずだ。
その監視の目をかいくぐり、山南先生は屯所の外に出てしまったらしい。
誰にも行先を告げることなく……。
「やっぱりあたしも行くよ。総司は明里さんを見張って。
あたしは、山南先生を探して、どうにか屯所に連れ戻すよ」
急いで髪をほどき、屏風の影に隠れて着物を脱ぎ捨てる。
用意してあった忍装束を着ると、一度部屋から出ていたお小夜が焦った顔で戻ってきた。
「明里姉さん、もう外に出ていきはった!」
「わかった!あたしたちもいくから、おかみさんに報告しておいて……」