幕末オオカミ 第二部 京都血風編
お小夜に言い聞かせている間、とんとんと階段を登ってくる音がした。
お客さんかな?鉢合わせしないようにしなきゃ。
どっちにしても、あたしたちは玄関からは出ていけない。
天井裏から屋根に抜け、そこから外に出なければ……そう思っていたとき。
「お邪魔するよ」
すっと、静かにふすまが開けられた。
「え……っ!!」
あたしと総司は、目を丸くして絶句した。
そこにいたのは、山南先生だったから。
山南先生はメガネを直しながら苦笑すると、ふすまをそっと閉めた。
「総司に聞いたよ。
不逞浪士の情報を集めるために、こんなところに潜入していたんだってね」
「や、山南先生、あの……あたし他の任務で、今から急いでいかなきゃならないところがあるので」
「そ、そうなんですよ。
お話があるのなら、俺が聞いておきます」
総司が、さっさと行けと目で合図する。
どうやら、山南先生を足止めしてくれるつもりみたい。