幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「ごめんなさい」
しゅんとして謝ると、山南先生はため息をつき、どこか投げやりに言う。
「きみが謝ることじゃないよ。
きみに命令を出した人間に、失望しているだけだ」
それは……土方副長のことだよね。
あたしをかばうように総司が前に出て、山南先生をまっすぐ見つめる。
「たしかに、土方さんは楓にあなたと明里を見張るように命令を出しました。
しかしそれは、明里が怪しすぎるからです」
本当のことを話すと、山南先生は黙って総司を見つめ返した。
「……それより山南さん。
今日、明里を屯所に連れて行こうという計画を、あなたは知っていたんですね。
だから、今俺たちの前に現れた。
その計画をあなたに話したのは……いったい誰ですか?」
山南先生の方を見ていたあたしは、思わず顔を上げて総司の横顔を見る。
たしかに、昨夜副長室にいたのは局長と副長、そしてあたしたちだけだったはず。
翌日、試衛館派の幹部にも通達がいったはずだけど、もちろん本人には知られないようにしているはずで……。
「あ……」
脳裏に、ある映像がひらめく。
それは、昨夜慌てて駆けていった伊東参謀の姿……。