幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「そして……俺が、陽炎を斬った」
総司が陽炎の最後を語った途端、槐は叫んだ。
「……くそぉぉぉぉっ!!」
山南先生から逃れようと、腕を振り回す槐。
その瞳は、総司だけをにらんでいた。
「殺してやるっ、沖田総司!」
「槐、やめなさい。きみは総司に敵わない」
「うるさいっ、離せぇぇぇぇっ!」
槐の目からは、涙がこぼれて頬を濡らしていた。
総司は槐の方を見ながらも、小次郎がいつ攻撃してくるかと警戒しているようだった。
けれど、小次郎は攻撃してくる気配はなかった。
ただ、悲しそうな瞳で槐を見ていた。
「槐……あんたは、陽炎が好きだったんだね」
あたしが言葉を発すると、槐はぴたりと動きを止めた。
そして、きっとあたしをにらむ。
「そうよ。あたしはずっと陽炎様が好きだったの。
けどどんな手を使っても、あの方は私を見てはくれなかった。
あの方が見ていたのは、あんただけだった……!」
槐の悲痛な声に、胸がきしむ。