幕末オオカミ 第二部 京都血風編
・仲間割れ
「土方くん……」
「……悪いな。人の恋路を邪魔する趣味はねえんだが」
土方副長はゆっくりと、山南先生と槐の方に近づく。
後ろの二人は、じっと黙って立っていた。
「山南さん、先にこいつの詮議をさせてくれねえか。
話を聞いたら、あんたに返すから」
副長は怖い顔をしていたけれど、どうやら槐を無理やりどうにかするつもりはないようだった。
「素直に話してくれれば、ひどいことはしないと約束する。
とにかく、まず聞かなきゃいけねえことがあるんだ」
「……ここじゃまずいのかい?
きみと槐を密室で二人きりにさせるつもりはないよ」
反論した山南先生に、副長は小さくため息をついて目を伏せる。
「信用されてねえ……か。
いいだろう。ではここでお前に質問する」
副長は細く開いた目で槐をにらむと、低い声で言った。
「……山南さんの腕を治す薬があるというのは本当か?
そしてなぜ、山南さんを新撰組から脱退させようとした?」
その質問を聞いた槐は、抵抗せずに答える。