幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「治す方法はある。
厳密に言えば、薬を使うんじゃないんだけどね。
このひとを脱退させようとしたのは……」
槐はちらりと山南先生を見た。
けれど、彼女を見つめていた山南先生と目があうと、すぐに視線をそらす。
「それが、新撰組にとって痛手になると思ったからだ。
そして、楓を可愛がっている人物を、ひとりずつ切り離してやろうと思った。
こいつが、あたしから陽炎様を奪ったように、あたしだって楓の大切なものを奪ってやろうと思った」
「だから、小娘の仲間を……偶然知り合った山南さんを標的にしたのか?
山南さんから話を聞けば、こいつの一番大事なものは総司だってすぐにわかったはずだろう?
総司を奪おうと思うのが普通じゃないか?」
副長の追及に、槐は舌打ちをした。
「聞いたよ。だから……楽しみは最後にとっておこうと思ったんだ」
「次々にみんなを標的にして、最後に総司を狙おうとしていたの?」
たまらずに声を出すと、槐はふっと笑みをこぼした。
そして、まだ自由な左手を背中に回す。
次の瞬間、左手にはもう一本の苦無がにぎられており、槐はそれを山南先生をめがけて振り上げた。
山南先生はその切っ先を避けるため、彼女の右腕を離してしまう。
足元の砂利を蹴り、背後に高く飛びのいた槐に向かい、副長が刀を抜いた。