幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「もうあんたたちと話すことはない。
あたしの目的はただひとつ。
新撰組を滅ぼすことだけ」
まだ冷たい春の風に、槐の三つ編みが揺れる。
寄り添った小次郎が、黙って手裏剣をかまえた。
「逃げるつもりか!」
「槐、待ってくれ!」
副長と山南先生が、槐たちがいる河原に駆け寄ろうと地を蹴る。
その瞬間、平助くんと斉藤先生も刀を抜いた。
「今の話は聞いてたけどさあ……俺、全然状況みえねーんだけど?」
平助くんが面白くなさそうな顔で言う。
そうだよね……平助くんは、あたしの任務のことも明里さんが怪しいってことも、何も聞かされていなかったんだもんね。
「とにかく、片腕が使えない山南総長を守らなければ」
斉藤先生が言うと、突然、槐の高らかな声が闇夜に響いた。
「逃げたりしないよ。
本当は楓だけ殺せれば幸運だと思っていたけど……一度にこれだけ隊士が集まってくれてるなんてね」
槐がにやりと笑うと、一層強い風が吹いた。
黒い川面が波立ち、揺れる。
かと思うと、突然水面がぼこりぼこりと泡立った。
副長も山南先生も驚き、足を止める。