幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「なに、あれ……」
総司の近くに寄り、目をこらす。
ざあざあと鳴る川から、次々に何かが上陸してくるのが見えた。
本能的に危険を感じ、ぶるりと背中が震える。
「あれは……もののけだ!」
斉藤先生が声をあげる。
すると、ずる、ずる、と音を立てながら、川から上がってきたものが一体、また一体と姿を現す。
それは、手足に水かきをもち、全身を鱗で覆われた、人間と魚の間のような生き物たちだった。
耳からはヒレみたいなものが飛び出していて、頭髪はなく、男か女かもよくわからない。
「もしや、お前が巡察中に見たという……」
「ああ、あの浪士にとり憑いていたもののけに酷似している」
総司と斉藤先生が視線を交わす。
「なんだあれ、気持ちわりい~!
岡崎一族って、あんなのと仲がいいわけ?」
「ええっ、そんなことないよ!」
あたしが大奥に行くまでは、あんなの見たことなかったもん。