幕末オオカミ 第二部 京都血風編
彼らの目は魚と同じで、ぎょろりとしている。
感情を感じさせない瞳が、そこはかとない恐怖を誘った。
「私たち一族は、幕府に手を切られて、どうしたと思う?」
槐があたしたちに話しかける。
「そうしたら、幕府を倒して新しい世を作ろうとしているやつらに金をもらって仕事をするしかないでしょ?」
「それは……討幕派に力を貸すっていうこと?」
「そうよ。幕府も、新撰組も、私たちが潰してやる」
岡崎一族が、討幕派に……でも、それともののけとどういう関係が?
「このもののけたちはね、南の海から来ているの。
幕府を倒すことに協力し、その目的が達成されたなら、外国がどんどん押し寄せる下関から移動して、琉球に彼らの国をつくることを約束したのよ」
そういえば、池田屋事件から二か月もたたないうちに、下関が外国の艦隊に砲撃されたって噂を聞いた。
江戸も下関も外国の艦隊が続々と押し寄せてきている今、太古の昔から海にすんでいた者たちはさぞかし迷惑していることだろう。
琉球といえば、日本よりもっと南の国だったはず。
討幕派は琉球まで支配するつもりなんだ……。