幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……くそ……、あの男を殺すしかねえか」
土方副長が恐ろしい顔で、小次郎をにらむ。
半魚人に取り囲まれ、どんどん間合いを狭められていくあたしたち新撰組。
その間から、ふらりと立ち上がった山南先生の姿が見えた。
「土方さん……俺に案があるんですが」
「なんだ、総司」
「俺が、狼化して山南さんの相手をします。
その間に土方さんたちはあの二人を捕縛してください」
「え……っ!」
狼化するなんて。
あたしは思わず敵から視線をはずし、総司を見つめてしまう。
「理性を保ったままじゃ、俺たちは山南さんを傷つけられない」
「総司……ダメだよ、そんなの」
狼化してわけがわからなくなっているうちに、山南先生と戦おうっていうの?
それじゃ、下手したら総司が山南先生を殺してしまうかもしれない。
それに、また総司の体に負担がかかってしまう……。
総司の着物の袖を引っ張ると、彼はこちらを見つめた。
「大丈夫だ。殺す前に……お前が止めてくれれば」
「総司……」
「真言が無力化されても、お前の声なら、絶対に届く」
力強い総司の声に、思わずうなずきそうになる。
けれど、一抹の不安がよぎった。