幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「……くそ……、あの男を殺すしかねえか」


土方副長が恐ろしい顔で、小次郎をにらむ。


半魚人に取り囲まれ、どんどん間合いを狭められていくあたしたち新撰組。


その間から、ふらりと立ち上がった山南先生の姿が見えた。


「土方さん……俺に案があるんですが」


「なんだ、総司」


「俺が、狼化して山南さんの相手をします。

その間に土方さんたちはあの二人を捕縛してください」


「え……っ!」


狼化するなんて。


あたしは思わず敵から視線をはずし、総司を見つめてしまう。


「理性を保ったままじゃ、俺たちは山南さんを傷つけられない」


「総司……ダメだよ、そんなの」


狼化してわけがわからなくなっているうちに、山南先生と戦おうっていうの?


それじゃ、下手したら総司が山南先生を殺してしまうかもしれない。


それに、また総司の体に負担がかかってしまう……。


総司の着物の袖を引っ張ると、彼はこちらを見つめた。


「大丈夫だ。殺す前に……お前が止めてくれれば」


「総司……」


「真言が無力化されても、お前の声なら、絶対に届く」


力強い総司の声に、思わずうなずきそうになる。


けれど、一抹の不安がよぎった。



< 174 / 404 >

この作品をシェア

pagetop