幕末オオカミ 第二部 京都血風編
陽炎との戦闘のときは、たしかにあたしの声が届いたようだった。
でも、池田屋のときは……あたしがなにをしても、総司は理性を取り戻さなかった。
あの一件以降、狼化していない彼がどういう状態になるのか……誰にもわからない。
「……ふざけんじゃねえ。
どうしてどいつもこいつも、死に急ぐような真似ばかりしやがる」
副長も同じことを思ったのか、眉をひそめて吐き捨てる。
「でも、早く山南さんを止めないと……腹の傷が心配です」
「えっ」
「たしかに。
あの傷はふさがっていないようだな」
斉藤先生の言葉に、平助くんが眉を下げる。
「嘘だろ、なんでだよ!
腕は治ったのに、なんで腹の傷は治らないわけ?」
「多分だが、同じ種類のもののけにつけられた傷だからだろう」
冷静に思えるけど、斉藤先生の声にも次第に焦りが混じり始める。
早くしないと、山南先生の命が危ない……。
ぎり、と副長が奥歯を噛む音が聞こえた。
その時。