幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「土方さん!」
総司の声で、ハッとした。
ギイン、と鋼どうしがぶつかいりあうような音がしたかと思ったら、副長が後ろへと体勢を崩していた。
あの副長が、押し負けた……!
副長はすぐに態勢を立て直そうとする。
しかしそのすきを、山南先生が逃すはずはなかった。
──ビュオオッ!
風を切るような音がして、ヒレの鎌が副長の顔に真っ直ぐに突き出される。
「ぐ……っ!」
「副長!」
副長の役者のような顔が切り刻まれることはなかった。
しかし、彼は攻撃を完全には避けきれず……その左の肩口を斬られ、風に流された黒髪を数本散らされた。
「副長!副長……っ!」
「騒ぐんじゃねえ小娘!こんなの、どうともねえんだよ!」
そう言いながら副長は、次々に襲う山南先生の刃を刀で受け止めていた。
そのたびに、苦しそうな顔をする副長。
どうしよう。加勢したいけど、相手が山南先生じゃ、どうしたらいいのか……。
唇を噛んでいると、苦無をにぎりしめたまま立ち尽くすあたしの横で、ふわりと風が動いたような気がした。