幕末オオカミ 第二部 京都血風編
・武士の決断
「……楓、あとは頼んだ!」
決意に満ちた低い声。
あっと言う間もなく、総司が隣から副長のもとに駆けていく。
「だめええええっ!」
総司は駆ける間、空を仰ぐ。
すると、頭髪の間から灰色の耳が、お尻からしっぽが飛び出した。
ぎしぎしと軋みながら、一回り太くなる腕に、鋭く伸びる爪。
「総司ぃっ!」
狼化が体の負担になることを、わかっているくせに……!
「なに、あれ……沖田は人狼だったの?」
槐の驚いた声が、遠くから聞こえた気がした。
けれど、そちらを気にしている余裕はない。
「うがうっ!」
狼化した総司は跳躍し、副長と山南先生の間に割って入る。
「総司、てめえ……何て無茶しやがる!」
副長が眉をひそめる。
「副長、沖田から離れてください!」
斉藤先生がもののけを蹴り飛ばしながら叫んだ。
もう、総司に任せるしかないと覚悟したんだろう。
副長は、舌打ちしながらあたしのそばへと駆け寄ってきた。