幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「ぐぅわぁぁぁっ!」
そんなあたしたちの思案を止めるかのように、総司が闇夜に吠える。
かと思うと、彼は突然、刀を鞘ごと、山南先生に槍のように投げつけた。
それをひらりとよける山南先生。
しかし総司は、一瞬にして彼の目前から消えていた。
風のような速さで、まるで4足歩行くらい身を低くして走った総司は、山南先生のすぐ近くに迫り、その左腕を取る。
そして大きな口を開け、鋭い牙をむきだしにした。
「ダメっ、総司、おあずけっ!!」
思わず叫ぶ。
だって、総司が山南先生の腕を噛み砕いてしまいそうだったから。
すると総司は、その声が聞こえたのかどうなのか。
「わうっ!」
返事をするように吠えると、がぶりと……鎌のようなヒレに、噛みついた。
そしてそれを咥えたまま首を勢いよく振り、腕から引きちぎってしまった。
「うわああああ……っ!」
山南先生が悲鳴を上げ、その場にうずくまる。