幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「山南さん!」
副長が叫ぶ。
総司はうずくまる山南先生の後ろに立ち、腕を振り上げた。
「総司、ひじっ!爪はナシ!」
あたしの声にぴくりと耳を動かした総司は、一度躊躇したあと……肘を直角に曲げ、それを山南先生の背中に向かっ
て振り下ろした。
ドンっと鈍い音がして、山南先生が倒れる。
どうやら、気絶したみたい。
「いい子!こっちにおいで!」
両手を広げると、あたしよりはるかに大きな人狼は、まるで犬のようにあたしに向かって走ってきた。
「わふんっ」
そして、お約束のようにあたしを押し倒そうとする。
その後頭部を、土方副長が自分の刀の鞘で殴った。
「種付けしてる場合じゃねえよ!」
「ううううう、ぐるるるる……」
総司は涙目で、土方副長に牙をむく。
「総司、それあんたの大好きな副長だよ!
ほら、元に戻って!」
あたしはいちかばちか、懐から霊符を取り出し、総司のおでこにくっつけた。
すると総司は、あっさりと人間の体に戻った。
耳やしっぽが次々に消えていき、目がいつもの色を取り戻す。