幕末オオカミ 第二部 京都血風編
なにが武士だよ。
恥をさらしたっていいじゃないか。
悲しければ、声を上げて泣けばいいじゃないか。
武士の誇りなんて、命の重さに比べたら、どれほどの価値があるんだよ。
喚いてしまいたかったけれど、総司に抱きしめられたら、そんな言葉は出てこなくなってしまった。
「ごめんなさい、ごめんなさい山南先生、あたしのせいで……!」
代わりに溢れるのは、後悔ばかり。
あたしが槐の正体に、もっと早く気づいていたら。
あたしが、大奥から逃げたりしなければ……!
「ばか、だなあ、楓くん……私はきみが、とても、好きだったよ……。
本当の、妹のように、思っていた……」
「先生……」
「いつも励ましてくれたね……
そして、さっきの言葉が聞けて……ひどい誤解をしていたことに、気づくことができた……。
ありがとう……」
山南先生はそう言うと、自力でなんとか体を起こし、膝をつく。
嬉しいって……副長が本当は、山南先生を大事に思っていたってことが?
なによそれ。
そんな、当然のこと……あたしがお礼を言われることじゃない。
「さあ……もう、時間がない」
そうこうしている間に、山南先生の傷口からは、とめどなく血が溢れだしていた。