幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「総司……お前に、介錯を頼める……かな」
「……光栄です。お受けします」
総司の目にも、うっすらと涙が浮かんでいた。
彼はそっとあたしから手を離し、立ち上がると山南先生の背後にまわり、刀を抜く。
そして、山南先生は着物を脱ぎ、上半身裸になると、自分の脇差を抜いた。
「では……さらば」
柄を持つ手に、ぐっと力が入る。
あと少しで切っ先がお腹に触れそうになった瞬間……。
「だめ……っ!」
意外な声が、夜空にこだました。
三つ編みを揺らし、槐が駆け寄ってくる。
「お前っ……」
平助くんが刀を抜こうとしたにも関わらず、槐は山南先生の目前にひざまづくと、その手をつかんで切腹を止め
た。