幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「お前が大奥から脱出してくれて、俺は幸せになれた。
それ以上自分の過去を否定するってことは、俺と過ごしてきた今までを否定するってことだ」
「そんなこと……」
「ないと言うのなら、もう……自分ばかりを、責めるな」
総司の顔は見えなかったけれど……その声は、今にも泣きだしそうに震えていた。
きっと、彼も後悔しているんだろう。
不用意に店に近づいて、槐に顔を見られたりしなければ。
あたしのために、陽炎を殺したりしなければ。
ああ……総司、ごめんね。
あんなに慕っていた山南先生の介錯を頼まれたりして……本当は、つらかったよね。
みんながいたからこらえていたけど、きっと、たくさん泣きたかったよね。
同じもののけなのに、自分だけが生き残っていていいのかって、悩んでいるんだよね。