幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「春風に 吹き誘われて 山桜 散りてぞ人に 惜しまるるかな……」


屯所に帰ると、うっとうしい人が伊東派の面々に囲まれて、縁側で和歌を詠んでいた。


その人は当然伊東参謀。


別に歌を詠んじゃいけないとは言わないけどさ、あんなに目立つようにやらなくてもいいのでは?


「……あれ、山南さんのことを読んだ句だろ?

あてつけがましいよな」


総司が忌々しそうに舌打ちする。


そう、山南先生が切腹してからというもの、隊内は揺れていた。


佐幕派の近藤局長と、鬼の土方副長を離れ、伊東参謀の方へすり寄っていく者が多く見える。


彼らは、山南先生の死が局長と副長のせいだと決めつけているみたい。


「やりきれないね……」


そのまま伊東参謀がいた太鼓楼を離れ、自分たちの部屋がある北集会所へと向かう。


今はこの二つを、新撰組の屯所としていた。


幹部の部屋は、塀側にある。


なんだか疲れてしまったあたしたちは、正面から入らず、そちらの方へ歩いていった。


すると……。





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