幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「すごいなあ、土方さんは。敵地の坊主にももてるなんて」


「はあ?」


「今、恋文をもらってたでしょう?」


恋文って……ええ!?


たしかにあのお坊さん、文を渡してたけど……しかも赤くなってたけど。


まさか、新撰組を敵視している西本願寺のお坊さんが、副長に恋……!?


お坊さんは宗派によっては女の人と交わることを禁じられているから、そういう人が多いんだって聞いたことがあるけど……。


頭の中に、めくるめく禁断の恋模様が描かれる。


「これか……?」


副長はその場でそれを開くと、ざっと目を通す。


うわあ、人の恋心を面白がっちゃいけないけど……すっごく読んでみたい、その文!!


総司と二人でわくわくしながら、副長の反応を待っていたけれど……。


「……本当だ、恋文だな。

いらねえから、燃やすなり、屑屋に売るなり、好きにしろ」


土方副長は興味のなさそうな顔で、ぽいとそれを総司に渡す。


「紙屑を売った金は、駄賃にして構わねえから。

甘いもんでも食って来い」


生気のない声でそう言うと、あたしの頭を優しくぽんぽんとなでた。


そっか、書き損じでもなんでも、屑屋は買ってくれるもんねって……ちょっと待て!



あ・の!鬼の土方副長が!!


あたしに優しい声をかけて、頭ぽんぽんしたぁぁぁぁっ!



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