幕末オオカミ 第二部 京都血風編
・一戦去ってまた出陣
「あっはははは!なんてマヌケなやつらだ!!」
池田屋事変後の宴会の最後、総司にあたしという据え膳を用意した土方副長。
彼は、翌日帰営したあたしたちを指さして大笑いした。
それもそのはず……。
遠慮なく総司に揺さぶられてしまったあたしの首筋の傷が、ぱっくり開いてしまったからだ。
寝ている間は大丈夫だったのに、翌朝、島原の大門をくぐったと同時に出血した。
『池田屋から半月ほどしか経っていないのに、ふさがりきるわけがないだろう!
そんな怪我人を抱くやつがあるかっ!!』
お世話になったお医者さんにあたしを抱えて駆け込んだ総司は、そう言ってめちゃくちゃ怒られた。
そして今、局長と副長の目の前で、しおっしおにしおれてしまっている。
「トシ!お前のせいだろう!笑うのはよせ!」
「ああ?俺は『ゆっくり話をしてこい』と言っただけだぜ?」
「恋する娘を前にして、若き情熱がおさえられるわけないだろう!」
「もういいです、局長……恥ずかしいので、やめてください」
傷を縫いなおされ、包帯ぐるぐる巻きにされたあたしは、局長にお願いする。
「そ、そうだな。すまん。
では楓くん、きみには傷が癒えるまで休養を申しつける。
くれぐれも、ムリはしないように」