幕末オオカミ 第二部 京都血風編
慶応元年・5月(現暦6月)。
やっと梅雨が明けた屯所に、夏の日差しが差し込んでくる。
浅葱の羽織も暑くなり、いつの間にか誰も着なくなったころ……。
局長が近藤派の幹部を広間に招集し、満面の笑みで言った。
「聞いてくれ諸君!
今月下旬、上様が上洛なさるらしい。
俺たちはその際の警護を任された!」
おおっ、と、永倉先生と原田先生が歓声を上げる。
「つっても、三条にお迎えに行って、二条城に入られるまでだけどな。
その後は城周辺の見回りだ」
土方副長が、すっかり元に戻った顔で、はきはきと告げる。
山南先生が亡くなった直後は、そうとう弱っていたみたいだけど……2か月以上経った今では、だいぶ落ち着いたみたい。
「まさか、京で上様の警護ができる日がくるとはなあ……!」
近藤先生は袖で目元をぬぐう。
「良かったなあ、近藤さん!」
「苦労してきた甲斐があったよな!」
永倉先生と原田先生が、感動して泣いてしまった近藤先生の肩をさする。
上様の警護かあ……まあ、新撰組にとっては晴れ舞台なんだろうけど。
大奥から逃げてきたあたしとしては、ちょっと複雑。