幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「真正面から訪ねてきたもので……捕縛する雰囲気でもなく、門のところで待たせているんですが」
困り果てた様子で、隊士が言う。
たしかに、あの狼は半魚人の群れを黙らせてしまうほどの、なんとも言えない威圧感があった。
その雰囲気に押されてしまったんだろう。
「わかった、ここに通せ」
局長が言うと、隊士はうなずいて門の方へと帰っていった。
「遅かれ早かれ訪ねてくるとは思ったが、まさか真正面から来るとはなあ」
局長は直接もののけと対峙したことがほとんどないからか、少し緊張したような表情をしていた。
「聞きたいことがありすぎるよね……」
六角獄舎でのこと、槐との関係……。
そして彼は、総司のことを一方的に知っているようだった。
総司の横顔をのぞきこむ。
けれど彼は、黙ったまま前を向いていた。