幕末オオカミ 第二部 京都血風編
・来訪者
やがて、彼は広間に現れた。
人の姿をした彼は、六角獄舎で見たときと同じ、浅黒い肌に灰色の長い髪、そして青い目をしている。
歳は、土方副長と同じくらいに見えた。
あのときと違うのは、その髪を無造作に結っているところと、ちゃんと着物を着ているところ。
袴を履かず、黒っぽい着物だけを身につけたその姿は、何とも言えない威圧感があった。
「近藤殿には、初めてお目にかかります。私は銀月(ぎんげつ)と申す者。
そこにおられる沖田殿と同じ一族の……あなたたちのいう『もののけ』と思ってもらえれば結構です」
視線を送られた総司の眉が、ぴくりと動いた。
「ってことはつまり……狼のもののけってことか」
永倉先生の言葉に、銀月さんはうなずく。
そっか、総司は狼のもののけと人間の女の人の間に産まれた人狼。
つまり銀月さんは、お父さんの側の一族なんだ。
「今日は、近藤殿と沖田殿にお話があって来ました」
丁寧な口調の銀月さんは、落ち着いた様子で話はじめる。