幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「父上は、あなたに生き写しでした。それは美しい狼で……」
「そんなことはいい。知りたくもない」
総司は冷たい口調で吐き捨てる。
そうだよね、そのお父さんのせいで、総司は人狼として今まで苦しんできたんだもん……。
銀月さんもそこは察してくれたようで、咳払いをして「すみません」と一言謝り、話を再開する。
「とにかく、頭領の跡継ぎが、我らには必要なのです。
彼には、あなたしか御子がおられないのです」
「500年も生きてきて、他に兄弟がいないというのも、不思議な話だな」
斉藤先生が静かに口を開く。
たしかに、それだけ生きてたら、もう一人や二人、子供がいそうだけど……。
しかしそれを聞いた銀月さんは、ゆっくりと首を横に振った。
「我々、もののけの狼の子は減り続けています。
子ができても力を持たないただの狼になるものや、短い寿命で死んでしまうもののけが多いのです」
「そんな……どうして」
思わず聞くと、銀月さんは小さくため息をついた。