幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「それは我々にもわからない。
ただ、もののけの力が急激に薄れてきているのは、我ら一族の話だけではないようです。
あの海の者どもも、昔はもっと話がわかる、賢い者たちでした。
それが今は、何も考えない人間のしもべと化してしまった」
「そういえばあいつらはお前さんみたいに人語を話しはしなかったな。
理解はしているようだったが」
土方副長が言う。
「とにかく、そういうわけで、人間に狩られたり、寿命で亡くなったり……そうして、頭領の御子は総司殿しかいなくなってしまった」
「俺のことを、よく見つけたものだな」
「頭領は、総司殿のことをよく話していましたから。
人の世に残してきてしまったことを、悔いていました。
きっと、つらい思いをしているだろうと」
「何を今さら。人妻をいたずらに孕ませておいて」
「……それでも、自分の子に情を持つのは、人も狼も変わりません」
総司の冷たい言葉に、銀月さんは落ち着いて言い返す。
「今、この国が混乱しているのは皆様もご存知の通り。
海のもののけたちが討幕派に与し……開国を推し進めようとしています」
「開国?彼らの目的は攘夷じゃないのか?」
局長が聞き返すと、銀月さんはうなずいた。