幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「彼らは、下関を砲撃され、たった半時で大敗してしまった」
「な……っ、半時……!?」
局長や副長が驚きで目を見開く。
あたしも、他のみんなも、驚きで声が出ない。
たった半時で、日本の砲台が異国の艦隊に敗れた……。
「異国の者どもは、この国とは比べ物にならない技術や力を持っているようです。
それを思い知らされた討幕派は、攘夷から開国へと思想を変えました。
異国を撃ち払うことは、もはや不可能。
ならば国を開き、その技術を取り入れ、国を強化してから再び攘夷を行うべしとの論が広がっています」
「そんな……」
幕府と一緒に攘夷を進める気満々だった新撰組。
幹部たちは、その話を信じられず、言葉を失った。
「幕府がなかなか攘夷に乗り出そうとしなかったのは、そういう理由があったのか。
勝てそうにないけれど、それを武士が言うわけにはいかねえから……」
原田先生が、悔しそうに唇を噛む。
「我々は、国を開くことに反対です。
異国に侵略されれば、我々狼が安心して暮らせる地が、なくなってしまいかねない」
そうだ、国を開いても異国が友好関係を続けてくれるとは限らない。
この国が侵略され、好きなようにされてしまうことだって考えられる。
「だから我々は、岡崎一族とも反目することになったのです。
彼らは最初は我々に協力を要請してきましたが、我々は断った」
そして、禁門の変でも討幕派を手引きするために暗躍していた岡崎一族の槐を見つけ、戦っていたのだと、彼は言った。
槐と銀月さんが敵になったのは、そういう経緯があったからなんだ。