幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「我らは海の者どもと同じように、人間と組む気はありません。
ただ、自分たちの一族を、尊い血統を残したい。
そのために、多少の戦は厭わないつもりです」
「……悪いが、俺は新撰組を離れる気はねえ。帰ってくれ」
説得の途中で、総司は立ち上がろうとする。
すると銀月さんも、腰を上げて少し声を張った。
「これは、あなたにとって何の利益もない話ではありません」
「なんだと?」
「あなたはこのまま、人間の世にいたら、確実に滅びるでしょう。
調べさせていただきましたが、今まで相当な無理をされてきたようですね」
しん、と広間が静まり返った。
それは、人狼として……人になったり狼になったりを繰り返したことを言っているんだろうか。
「狼であり、なお人であろうとすれば、当然お体に負担がかかります」
「でも、最近は調子がいいんだよな、総司?」
平助くんが心配そうに総司の顔をのぞきこむ。
「そうそう、池田屋以来、すごく顔色が良くなって……」
永倉先生が言いながら、はたと表情を止めてしまった。
「……そういえば、どうして総司の体調が良くなったんだっけ?」
原田先生が首をかしげる。
総司が池田屋で人の体に限界が来て理性を失い、あたしに噛みついてその血を飲んだってことは、副長と局長以外はまだ知らない。