幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「そんな……ひどい。
総司は何も悪くないのに」
横で静かに話を聞いていた楓の声が、切なげに震える。
「だよなあ。
生まれたことが罪だって言われてもなあ」
「そんなこと、あるわけない」
お前なら、そう言ってくれると思ったよ。
人狼という事実を知った後でも、楓は俺を人間として扱ってくれた。
「近藤先生も、同じことを言ってくれた」
試衛館に着いた俺を待っていたのは、
当時の天然理心流宗家、近藤周斉先生だった。
『沖田宗次郎です。
よろしくお願いします』
『よく来たなあ、宗次郎。
今日はムリしなくていいから、明日からがんばっておくれ』
『あなた、私が宗次郎を案内しましょうか』
近藤夫妻は、とても面倒見の良い人たちだった。
俺はおかみさんに家の中を一通り案内され、それから道場へ向かった。
『ここが道場だよ』
『道場……』
『剣術を見たことがある?
宗次郎も大きくなったら、内弟子にしてもらえるかもね。
それまでお勤めをがんばるのよ』
おかみさんが笑って道場の戸を開く。