幕末オオカミ 第二部 京都血風編
やがて案内されたのは、二の丸御殿の白書院だった。
壁には水墨画が描かれており、床には畳が敷き詰められている。
天井は高く、そこにも一面に模様が描かれている。
多分、普段は将軍の寝室なんかに使われる部屋だろう。
大名や朝廷の使者と会うときは、もっと立派な襖絵が描いてあるとか、床は板張りだとか聞いた覚えがある。
意外に丁寧にそこまで送り届けられたあたしは少し気が抜けて、ぼんやりと壁の水墨画を見ていた。
いきなり縛られたり斬りつけられたりしたらどうしようと思ったけど、そうはならなかった。
護身用に屯所の中でも持ち歩いていた短刀を取り上げられただけ。
もちろん逃げられないように、部屋の外には見張りがいるんだろう。
さて、これからどうなるんだろう。
うまく想像できないでいると、閉じられていたふすまがすっと開いた。
「あ……!」
慌てて頭を下げる。
廊下から誰かが姿を現したからだ。