幕末オオカミ 第二部 京都血風編
すると、中からむわりとした熱気と、汗のにおいが流れ出てきた。
そして、竹刀の打ち合う音が耳に響き、
相手を打ち負かそうとする門人たちの姿が目に飛び込んで……。
『……はうっ……』
なぜか吐き気がした幼い俺は、道場の裏へと急いで走った。
『うええ……っ』
『どうしたの、宗次郎?
あら、着物が……』
背中をさすってくれるおかみさん。
どうしたと聞かれても、俺だってわけがわからなかった。
『どうしたんですか、母さん。
その子は……もしや、宗次郎ですか?』
突然後ろから声がかかり、びくりと背が震えた。
おそるおそる振り返ると、
そこにいたのは大きな若い男で……
そう、竹刀を持った近藤先生だった。
当時はまだ周斉先生の実家に養子に入っていたから、名前を嶋崎勝太といった。
『やっ、怖いよう……!』
『宗次郎、勝太のどこが怖いの?』
『お願いっ、お願いしますっ』
『宗次郎?俺が何かしたか?』
『お願いだから、ぶたないで……っ!!』