幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「でも……」
上様に何かあったら、幕府にとって致命傷になる。
この不安定な世の中、どうなってしまうのかわからない。
それは、新撰組にとっても恐るべき事態だ。
「楓、これは命令だ。
余についてこい。さすれば、新撰組もお咎めなしとしてやろう。
もしお前が拒否すると言うのなら……」
上様の眉間に、シワがよる。
黙ってその言葉の続きを待つあたしに、彼は少し辛そうに告げた。
「拒否するなら、近藤以下幹部全員を、罪人隠匿の罪で斬首刑に処す」
「そんな……!」
幹部全員を、斬首刑にだなんて……!
たしかに、彼らはあたしの正体を知っていて隠していた。
けれど、それ以外は何も悪いことをしていないのに。
「……そんな……」
それ以外に言葉が出ない。
上様の申し出は、とてもありがたい。
みんなの命を助けてくれると言っているんだ。
だったら、あたしがみんなのために上様の元に帰ればいいだけ……。
最初から、彼らを守るつもりでここに来たんじゃないか。