幕末オオカミ 第二部 京都血風編
生きていく覚悟《総司目線》
夜の闇の中を、灯りも持たずに駆け抜ける。
息が切れそうになってきたころ、城壁の前で警護をしている新撰組隊士たちの姿が見えてきた。
「沖田じゃないか。どうした?」
浅葱の羽織を着てきた俺の姿を見つけ、ちょうど門前にいた斉藤に呼び止められる。
「斉藤……。楓が、楓が来なかったか?城の中へ入らなかったか?」
斉藤にしか聞こえないように注意しながら、小さな声でたずねる。
すると彼は、眉を寄せて首をかしげた。
「はて、楓がどうして城の中へ?」
どうやら、門から入った様子はないようだ。
「すまん、説明すると長くなる。土方さんはどこだ?」
とにかく、土方さんに知恵を貸してもらおう。
あの人なら……。
背中を返すと、「そういえば」と斉藤がつぶやいた。
振り返ると、彼は俺に近づき、小声で知らせる。