幕末オオカミ 第二部 京都血風編
訴えるような瞳を見て、ハッとする。
そうだ。
新撰組隊士という立場では、上様に逆らうなんて、とても無理。
けれど、そうじゃなければ……。
「おいおい平助、組を抜けるなんて簡単に言うなよ」
「ほら、鬼副長がにらんで……ない?」
みんなに注目された土方さんは、あごに手をあてて何かを考え込んでいるようだった。
「……悪くねえな」
「副長?まさか、本当に沖田を抜けさせる気じゃないでしょうね?」
斉藤が焦ったような表情で問う。
「いいや。総司にはもともと、二つの顔がある。
それを利用するんだ」
考えがまとまったらしい土方さんは、俺を真っ直ぐに見つめた。
「けど、お前にそれなりの覚悟がなきゃ、この計画は無駄だ。
楓が命をかけてくれたように、お前も楓のために、その命をかける気はあるのか?」
「……はい!」
楓を助けるためだったら、なんだってしてやる。
二度と、寂しい思いなんかさせない。
自分をいらない人間だなんて、思わせたりしないから。
今後も二人で生きていくために、俺は……この運命のすべてをかける。
うなずいた俺に、土方さんは楓を奪還する計画を話しはじめた。