幕末オオカミ 第二部 京都血風編
・もののけのお迎え
松本さんの指示で用意された布団にくるまり、あたしは朝を迎えた。
「……うん、もう痛くない」
一橋公にひっぱたかれた頬は、あのあと松本さんが冷やしてくれたおかげで、すぐに腫れがひいた。
「うーん……いい布団だったけど、あまり眠れなかったなあ……」
あたしは用意された着物をなんとか一人で着ると、髪を適当に結う。
昨夜からうじうじうじうじと同じことを何度も考えてみたけど、結局答えは一つしか出なかった。
「結局みんなを助けるためには、上様の言うことを聞くしかないんだよね……」
死ぬほど嫌だけど。
でも、みんなが助かるなら……。
「楓殿、松本です。もうご起床されておりますか」
「あ、はい起きてますけど」
っていうか寝られなかったから、頭が痛いよ……。
返事をすると、開けられたふすまの間から、松本先生が焦った顔をのぞかせた。
「すみません、一緒に来ていただけませんか。
上様の具合が……」
「えっ」
「お願いします」
松本さんの勢いに押され、あたしは上様のいる黒書院に急いだ。