幕末オオカミ 第二部 京都血風編
ああ、上様って本当は優しいお方だったんだ。
幕府のため、誰より愛する御台様のため、心を砕いて……あたしみたいな末端の側室までそれが行き届かなかっただけ。
決して、冷たい人間じゃなかったんだ。
でも……。
「何もいらない……」
もうあたしは、上様の寵愛なんか望んでないし、期待もしない。
美味しい食べ物も、綺麗な着物も、何もいらない。
ただ、あたしが望むのは……。
「何も、いらないから……新撰組に……帰して……」
途中で、自分が何を思って、何を口に出しているのか、はっきりしなくなっていた。
あたしはそのまままぶたを閉じ、眠りの中へと落ちていった。