幕末オオカミ 第二部 京都血風編
かちゃり、と食器が鳴る音にハッとした。
気がつけば、あたしは白書院に戻っていた。
布団に寝かされていて、手首には包帯が巻かれている。
あたりは薄暗くなって、小さな蝋燭が一つ、部屋の隅に灯っていた。
視線を動かすと、そこにいたのは……。
「きょ、局長!」
「ああ、楓くん気がついたか……話は松本先生から聞いたよ」
あたしをのぞきこんでいたのは、疲れきった顔の近藤局長だった。
「局長……ごめんなさい、あたし、とんでもないご迷惑をおかけして……」
ゆっくり起き上がると、そっと抱きしめられる。
「何を謝ることがある。
きみを新撰組に入隊させたのは、他でもないこの私だ」
優しい声に、思わず涙が出そうになる。
「それに、きみが池田屋で総司に噛みつかれたことはトシに聞いていたが……あれは、総司の命を救うためにきみが仕掛けたことだったんだな?」
どうやら、局長はあたしの血の秘密を松本さんか誰かから聞いたみたいだ。
こくんとうなずくと、局長はあたしを抱きしめる腕に力をこめた。
「怖かっただろう。痛かっただろう。
それでも、総司を助けてくれたんだな。本当にありがとう」