幕末オオカミ 第二部 京都血風編
──パアン!!
大きな音がして、勢いよくふすまが開いた。
「やはりそういうことだったか……!」
現れたのは、山形の眉を吊り上げた、一橋公だった。
今の会話、聞かれてた……!?
局長も聞かれていることに気づいていなかったようで、目を白黒させていた。
「お前、やはり新撰組に男がいたんだな。
側室の身分でありながら……許されることではないぞ」
一橋公はつかつかと歩みよってくると、手を振り上げる。
殴られるのかと思った瞬間、あたしの目の前に局長が両手を広げて立ちふさがった。
「何の真似だ近藤!そこをどけ!」
「いいえ!あなたこそ、女に手を上げるとは何事ですか。
女子供を守ってこその武士でしょう!」
空気が震えるような大音声に、一橋公も一瞬ひるむ。
けれど、すぐに刀の柄に手をかけて怒鳴り返した。
「ええい近藤、誰に向かってそのような口をきいておるのだ。
我こそは禁裏守衛総督、一橋慶喜なるぞ!
そこへなおれっ!」