幕末オオカミ 第二部 京都血風編
一橋公の名乗りを聞いても、局長はあたしを庇ったまま動かない。
いけない、このままじゃ局長が……!
なんとかしなきゃと思った瞬間、ぐらりと地面が左右に揺れた。
また血が足りなくてクラクラしたのかと思ったけど、そうじゃないみたい。
局長も一橋公も、驚いたように目を見開き、動きを止めていた。
すると一度おさまった揺れが、強さを増してあたしたちを襲う。
まるで、二の丸御殿自体が何かに揺さぶられているようだ。
「強風か?」
「いえ、安政の時のような地鳴りでは?」
10年ほど前、大規模な地震があったというのは誰でも知っている。
そのことを思い出したのか、一橋公の顔から見る見るうちに血の気がひいていった。
「外に出て様子を見てみるぞ!」
一橋公はそう言い、脱兎のごとく、部屋の中から走っていった。
「もし地鳴りだったら、我々も外に出た方が良いかもしれない。
立てるか?」
まさかお城が簡単に崩れてしまうとは思わないけど、局長の言う通り、一度広い場所に出た方が安全かもしれない。
あたしは局長の腕につかまりながら、左右に揺れる城から庭へと出て行った。