幕末オオカミ 第二部 京都血風編
部屋の中にいた上様は、部屋の中央で立って刀を抜いていた。
あたしの血が効いたのか、体の腫れはひいていて、ちゃんと着物と袴をつけている。
その周りを、ヘビやカエルが取り囲んでいた。
「げ……っ!」
普通のヘビやカエルなら、上様も刀を抜くほど警戒はしないだろうけど、問題はその大きさ。
あたしの膝くらいの大きさのカエルや、背丈と同じくらいの長さのヘビがうようよしている。
き、気持ち悪い~!!
「上様っ、こちらへ!」
せっかく助けたのに、毒蛇のもののけに噛まれたりしたら大変だ。
あたしはその辺のカエルやヘビを足で蹴り飛ばし、上様の手をつかむ。
「楓!いったいこれは……」
「わかりませんけど、もっと広い所へ移動しましょう!」
猿に囲まれている城内は、相変わらずぐらぐらと足元を揺らす。
ヘビたちも上様を狙っているみたいだったし、このまま外に出たら、あの猿の群れに囲まれてしまうかも。
「では、大広間へ」
松本さんに案内され、あたしたちは大広間へと移動した。