幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「曲者だ!上様をお守りしろ!」
途中の廊下で一橋公が叫ぶと、城内の揺れに右往左往していた家来たちが気づき、一緒に大広間へと入ってくる。
家来たちで上様を囲み、一の間の奥へと進んだ、そのとき。
続きになっている二の間のふすまが突然開いたかと思うと、そこから数頭の狼が現れた。
「いったいなんなんだ!」
一橋公が叫ぶ。
家来たちがいっせいに刀を抜き、狼たちに向かってかまえる。
その先頭にいるのは、一人の人物。
巨大な二股の狼を従えた彼は、黒い髪から銀色の耳をのぞかせていた。
袖から出た腕には鋭い爪がついており、背後からは銀色のしっぽが見える。
金色の瞳に、口元からのぞく尖った牙。
その姿を認めた途端、全身が震えた。
それはたった今、もう会えないかもしれないと覚悟した、愛しい人。
「どうして……?」
そこにいるのは確実に、狼化した総司、だった。