幕末オオカミ 第二部 京都血風編
彼は腰に二本の刀を差したまま床を蹴り、こちらに向かって走りだす。
「う、うわあああっ」
家来たちは総司の信じられない姿におののきながらも、上様を守ろうと刀をかまえる。
その群れに一人で向かっていった総司は、あっという間に取り囲まれた。
しかし……。
「ぐわあああぁぁぁぁっ!」
彼が大きく叫ぶと、空間全体がビリビリと震えた。
それを恐れて家来たちがひるんだすきに、総司は一歩踏み出す。
「がうっ!」
床を蹴って飛んだと思うと、彼はひとりの肩を蹴飛ばし、その体が床に着く前に、両隣にいた家来の腕を一本ずつつかみ、投げ飛ばす。
「な、なにをしてるんだ、やめろ!」
思わず近藤先生が前に出て叫ぶけど、総司は何も聞こえていないように、ものすごい速さで家来たちを倒していく。
肘でみぞおちを打ち、背後に回し蹴りを食らわせ、振り向きざまに頭突きをお見舞いする。
そうして総司は、たくさんの抜き身を前にして怯むことなく、家来全員を気絶させてしまった。
残ったのは、上様と一橋公に松本さん、そして近藤先生とあたしだけ。