幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「総司っ、元に戻って!」
あたしはさらしの中に隠していた、かろうじて取り上げられていなかった護符を、総司に投げつける。
すると総司はなんの抵抗もなくそれを受け止めた。
あっさりと、耳やしっぽや牙が消えていく。
「なんだ、お前は……人……なのか?それとも、もののけか?」
人の姿に戻った総司に、一橋公がこわごわ尋ねる。
「楓、近藤、お前たちの知り合いか」
上様に問われると、近藤先生はその場に座り込んでしまった。
総司……いったい何を考えてるの?
こんなことをしてしまったら、新撰組が……。
「答えろ。お前は誰だ」
黙ってしまったあたしたちの代わりに、上様が総司に問いかける。
すると総司は、意外に落ち着いた様子で、口を開いた。
聞きなれた低い声が、するりとその唇から落ちる。
「お初にお目にかかります。
私は、沖田総司と申します」
「沖田総司……聞いた覚えがあるな」
上様ははて、と首をかしげる。