幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……私はかつて、新撰組一番隊隊長を務めさせていただいておりました」


総司が自分からそう言うと、一橋公のこめかみに青筋が浮かび上がった。


「新撰組が何の用だ!」


「いいえ、今はもう私は新撰組隊士ではありません。私は……」


総司はちらっとこちらを見たけど、すぐに上様を見つめなおす。


隊士じゃないって、どういうこと?


総司の考えていることがさっぱりわからなくて、胸がどくどくと音を立てる。


「私は、人と狼の間に産まれしもののけの頭領。

この狼たちも、外のもののけたちも、すべて私個人の軍隊です」


「な……っ!」


なんだって!?


それって、銀月さんの申し出を受けて、狼や山や森のもののけたちの頭領になったってこと?


驚きのあまり声が出なかった。


周りを見ると、近藤先生も松本さんも一橋公も、ぽかんと呆気にとられたような顔をしていた。


「この目で見たのだ。お前が人狼だということは認めるしかないな。

その元新撰組の人狼が、余に何の用だ」


上様だけが、凛とした瞳で総司を見つめなおす。


口をはさめるような雰囲気でもなくて、あたしはヒヤヒヤしながら成り行きを見守るしかできない。



< 266 / 404 >

この作品をシェア

pagetop