幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……上様。あなた様に、この軍隊を差し上げます。
討幕派の持っている、海や川のもののけの力に対抗しうる力になることを、お約束いたします」
総司がそう言って頭を下げると、狼の姿の銀月さん、そして部屋にいたすべての狼も、同じように首を垂れる。
「だから」
総司だけが、さっと顔を上げる。
その瞳は鋭く、上様を射抜くように見つめていた。
「その代わりに楓を……楓様を、俺にください」
総司……!
もしかして、あたしのために新撰組を抜けたの?
あんなに嫌っていたもののけの頭領になったの?
そこまでして、あたしを……?
唇が震えて、涙が溢れそうになる。
「楓を?」
「血のことは存じております。
ですから、彼女を上様の元へ定期的に通わせることをお約束します。
それを条件に、どうか、楓様を……俺にください」
じっと、上様が総司を見つめる。
松本さんは今まで起こったことを頭の中で整理するのに精一杯という顔。
さすがの一橋公も、黙って成り行きを見つめている。
すると、近藤先生が突然立ち上がり、総司の元へ駆けていった。
そして、彼の横で土下座し、深く頭を下げた。