幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「そう思う女性がいるとはね。

余に説教はするし、自分で肌を傷つけるし、裸足で走り回るし……お前には敵わないよ」


そういえば、さっき血を飲ませようとして、すごく無礼な口のききかたをしちゃったっけ。


上様、意識もうろうとしてたくせに、それは覚えていたか……!


ぎくっとして身を小さくしていると、上様から意外に優しい声が降ってくる。


「……彼が、お前がどうしても新撰組に戻りたかった理由なんだな?」


「上様……」


「余にも、誰よりも大切な人がいる。

だから、どうしても余は生き延びなければならない。

正直、お前を手放したくはない。けれど」


ぽん、と上様はあたしの肩にその手を置いた。


腫れの引いたその指は細長く、優しさを感じさせる。


おそるおそる顔を上げると、上様は微笑んでいた。


「彼にお前を返すよ。助けてもらった礼だ」


「上様……!」


「慶福、何を言っているんだ!」


上様の発言に、松本さんと一橋公が反応する。


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