幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……総司!!」
その胸に飛び込むと、総司は両腕であたしをぎゅっと抱きしめてくれる。
「楓……ごめんな。遅くなって」
低い声が耳元で聞こえると、涙がぽろぽろと溢れだした。
「ああ、しかし……妻にするには身分の問題があるか」
上様がぽつりとつぶやく。
そうだった。
ひとつ問題は解決したけど、まだあたしと総司の間には壁があったんだった……。
しかし、上様があっさりと次のひとことを口にした。
「松本、楓をお前の養女にしてやれ」
「へっ?う、上様、なにを?」
「苗字帯刀を許されたお前の身分なら、その養女が武士の妻になるのに不都合はないはずだよな?」
突然の事態に目を白黒させる松本さんをよそに、上様は淡々と話を進めていく。
ちょ、ちょっと待って。
あたしが、松本さんの養女になるってこと?
「紙の上のことだけだ。誰でもやっているだろう。
余が許すから、あとは頼んだ」
そう言って、上様はあたしを見て笑った。