幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「良かったね、楓!上様公認になれたなんてすごいよ!」
隊務に戻っていく平助くんが、あたしに笑いかける。
「うん、ありがとう」
「祝言はいつだ?」
斉藤先生まで入ってきて、いつものようにさらりと爆弾を落とす。
しゅ、祝言だなんて。
そりゃあできればいいなとは思うけど、早すぎない?
「……山南さんの一周忌が終るまでは、やらねえよ」
総司が静かに言うと、二人ともからかうような目から、寂しそうな表情に変わってしまう。
永倉先生や原田先生には堅苦しいとか思われるかもしれないけど、彼の介錯をした総司にとっては、当然の心遣いだろう。
「うん……そっか。
山南さんが生きていたら、きっと喜んでくれただろうにね……」
「藤堂、余計な口をきくな」
山南先生は、隊規違反で切腹したことになっている。
どこで他の隊士が聞いているかわからない場所で、彼に同情するような発言をしてはいけない。
幹部がそんな話をしていたら、局長や副長にたいする疑念が広まってしまうからだ。
「わかってるよ。じゃあ俺、これから巡察だから。
二人とも、本当におめでとう!」
平助くんは爽やかに笑うと、どたどたと走って行ってしまった。
その姿を見送っていると、突然後ろから声をかけられた。