幕末オオカミ 第二部 京都血風編


非番だったあたしたちが向かったのは、山南先生が眠る光縁寺。


「報告だけは、早くしておかねえとな」


「しなくても、きっと見ていてくれるだろうけどね」


「ああ……あの人は、きっと俺たちを見守ってくれてるよな」


通りかかった花売りから花を買い、寺の井戸で水を汲む。


そうして山南先生のお墓がある場所まで歩くと、そこには予想もしない先客が、静かに手を合わせていた。


「槐……」


思わず名前を呼ぶと、先客はハッとこちらを向く。


長い三つ編みは前に見たのと一緒だったけど、今日の彼女はとても質素な、普通の町娘のような着物を着ていた。


それでも、島原での濃い化粧をしていた彼女より、すっきりしていてなんだか綺麗に見える。


「こんなところで、何をしている」


総司があたしを庇うように前に出ると、槐はちっと舌打ちをする。


「見てわからないの?墓参りだよ」


「山南先生に、会いに来てくれたの?」


「気持ち悪い言い方するんじゃないよ」


槐はぷいとそっぽを向いてしまった。


総司は警戒を解かないけれど、あたしには今日の彼女に戦う意思を感じ取ることができなかった。



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